RHEL 8・RHEL 9 のサポート期限はいつまで?RHEL ライフサイクル完全ガイド【2026年版】
「RHEL のサポート期限はいつまでか」という質問には、実は2つの答えがあります。1つはメジャーバージョンとしての期限 — RHEL 8 なら2029年5月31日 — で、移行計画を立てるときに使う日付です。もう1つは、いま動いているサーバーが実際にパッチを受け取れているかという問題で、こちらはマイナーリリース単位で決まります。この2つを混同すると、「サポート中のはずの RHEL 8 サーバー」が実は何年もパッチを受け取っていなかった、という事態が起こります。本記事では、RHEL 7/8/9/10 の正確なサポート期限、Red Hat の10年ライフサイクルの仕組み、そして見落とされがちなマイナーバージョンの罠までを順に整理します。
RHEL ライフサイクルの仕組み — 3つのフェーズ
Red Hat Enterprise Linux の各メジャーバージョンは、リリースから約10年間の標準ライフサイクルを持ち、次の3つのフェーズを順に通過します。
- フルサポート(Full Support、約5年) — 新機能の追加、新ハードウェア対応、バグ修正、セキュリティ修正のすべてが提供される期間です。マイナーリリース(8.1、8.2 …)はこの期間を中心に、おおむね半年ごとに公開されます。
- メンテナンスサポート(Maintenance Support、約5年) — 新機能の追加は止まり、重要度の高いセキュリティ修正(RHSA)と重大なバグ修正が中心になります。一般に「RHEL のサポート期限」「EOL」と呼ばれるのは、このメンテナンスサポートの終了日です。
- 延長ライフサイクルサポート(ELS: Extended Life Cycle Support) — メンテナンスサポート終了後に利用できる有償アドオンです。重大・重要度の高いセキュリティ修正を数年間延長して受け取れます。RHEL 7 は2029年5月31日まで、RHEL 8 は2033年5月31日まで、RHEL 9 は2036年5月31日までの提供が公表されています。
これとは別に、延長アップデートサポート(EUS: Extended Update Support) という仕組みがあります。ELS がメジャーバージョンの寿命を延ばすものであるのに対し、EUS は特定のマイナーリリースをリリースから約2年間パッチ対象に保つための有償ストリームです(対象は偶数マイナーのみ)。この違いが後述の「マイナーバージョンの罠」に直結します。
RHEL 全バージョンのサポート期限一覧
各メジャーバージョンの GA(一般提供開始)から ELS 終了までの日付は次のとおりです。日付は ISO 8601 形式(年-月-日)で表記しています。
| バージョン | GA(一般提供開始) | フルサポート終了 | メンテナンスサポート終了(EOL) | 延長サポート終了(ELS / Extended Life Cycle) |
|---|---|---|---|---|
| RHEL 10 | 2025-05-20 | 2030-05-31 | 2035-05-31 | 2039-05-31 |
| RHEL 9 | 2022-05-18 | 2027-05-31 | 2032-05-31 | 2036-05-31 |
| RHEL 8 | 2019-05-07 | 2024-05-31 | 2029-05-31 | 2033-05-31 |
| RHEL 7 | 2014-06-10 | 2019-08-06 | 2024-06-30(終了済み) | 2029-05-31 |
「メンテナンスサポート終了(EOL)」列と「延長サポート終了」列は、当サイトのデータレイヤー(毎晩 upstream と同期)と照合され、Red Hat 側の日付が変わればサイトのビルドごとに自動更新されます。バージョン名をクリックすると、各バージョンの最新ステータスとリスクスコアを確認できます。
この表から読み取るべきポイントは3つあります。第一に、RHEL 7 はすでに通常サポートが終了しています。2024年6月30日以降、ELS を契約していない RHEL 7 サーバーはセキュリティパッチを一切受け取っていません。第二に、RHEL 8 は2024年5月末にフルサポートを終えてメンテナンスサポート期に入っており、EOL となる2029年5月31日まで残り3年を切っています。第三に、RHEL 9 のフルサポート終了(2027年5月31日)は意外と近いという点です。EOL の2032年まではまだ余裕がありますが、新機能やマイナーリリースの追加は2027年で止まります。
マイナーバージョンの罠 — 「RHEL 8 は2029年までサポート」の落とし穴
ここからが本記事で最も重要な部分です。次の2つの文は、どちらも正しい事実です。
「RHEL 8.6 のまま固定されたサーバーは、EUS 契約がない限り2022年11月9日以降パッチを一度も受け取っていない」 — これも正しい。
矛盾しているように見えるこの2つの事実こそ、RHEL のライフサイクルで最も誤解されやすいポイントです。仕組みはこうです。Red Hat が標準サブスクリプションでパッチ(エラータ)を提供するのは、各メジャーバージョンの最新マイナーリリースだけです(2026年8月時点では 8.10、9.8、10.2)。dnf update を普通に実行しているサーバーは自動的に最新マイナーへ追従するため問題ありません。しかし、ベンダー認証やゴールデンイメージ、検証済み環境の維持などの理由で特定のマイナーに固定(subscription-manager release --set によるバージョンロック)されたサーバーは、次のマイナーリリースが出た瞬間に標準ストリームから外れます — 資産管理台帳の上では「RHEL 8: 2029年までサポート中」と表示されたままで。
救済策として、偶数マイナー(9.4、9.6 など)にはリリースから約2年間の EUS(有償)が用意されています。一方、奇数マイナー(9.3、9.7 など)には EUS がなく、後継リリースが出た時点でパッチ提供が完全に止まります。主要なマイナーリリースの状況は次のとおりです。
| マイナーリリース | リリース日 | 標準ストリームでのパッチ提供 | 現在の状態(2026年8月時点) |
|---|---|---|---|
| RHEL 8.6 | 2022-05-10 | 8.7 リリース(2022-11-09)で終了 | 提供なし。EUS は2024-05-31、SAP 向け E4S も2026-05-31に終了 |
| RHEL 8.8 | 2023-05-16 | 8.9 リリース(2023-11-14)で終了 | 標準・EUS ともに提供なし(EUS は2025-05-31に終了)。SAP 向け E4S のみ2027-05-31まで |
| RHEL 8.10(最終マイナー) | 2024-05-22 | 現行 — 2029-05-31まで | RHEL 8 の全セキュリティエラータを受領。ELS で2033-05-31まで延長可 |
| RHEL 9.4 | 2024-04-30 | 9.5 リリース(2024-11-12)で終了 | 提供なし。EUS は2026-04-30に終了。E4S / Enhanced EUS のみ2028-04-30まで |
| RHEL 9.6 | 2025-05-20 | 9.7 リリース(2025-11-11)で終了 | EUS 契約がある場合のみ2027-05-31までパッチ提供。契約がなければ2025年11月以降提供なし |
| RHEL 9.7 | 2025-11-11 | 9.8 リリース(2026-05-19)で終了 | 提供なし — 奇数マイナーのため EUS もなし |
| RHEL 9.8(現行) | 2026-05-19 | 現行 — RHEL 9 の標準ストリーム | RHEL 9 の全セキュリティエラータを受領 |
8.0 から 9.8 まで、全20マイナーリリースの詳細表(各リリースの供給終了日・EUS 期限・E4S 期限を含む)は英語版の詳細記事にまとめています → Is RHEL 8.10 / 9.4 / 9.6 / 9.7 Still Supported?(英語)。同記事の日付は2026年8月11日に Red Hat の product life-cycle API と照合済みです。
古いマイナーに固定されたサーバーが見つかった場合、取れる対応は基本的に3つです。
- バージョンロックを解除して最新マイナーへ更新する。
subscription-manager release --unsetでロックを外し、dnf updateを実行して 8.10 / 9.8 に到達すれば、追加費用ゼロで標準ストリームのパッチ提供が再開されます。固定の理由を誰も覚えていないなら、これが正解です。 - 固定が本当に必要なら、そのマイナーに対応する有償ストリームを契約する。 ISV 認証や SAP 環境の変更管理などで動かせない場合は、EUS(生きている偶数マイナー: 9.6 は2027年5月31日まで)や SAP 向けの E4S / Enhanced EUS を契約します。危険なのは、どのストリームも契約しないままメジャーバージョンの期限だけを見て安心してしまうことです。
- 移行のシグナルとして扱う。 2026年に 8.6 のまま固定されているサーバーは、パッチ運用の問題ではなくライフサイクルの問題です。RHEL 8 自体の期限(2029年5月31日)に向けたメジャーバージョン移行計画に組み込みましょう。
RHEL 全バージョンの最新サポート状況・残り日数・リスクスコアは、毎日更新される RHEL ライフサイクルページでいつでも確認できます。RHEL 以外も含めて、社内で使っているソフトウェアのサポート期限をまとめて調べたい場合は、480以上のプロダクトに対応した EOL チェッカーをご利用ください(無料・登録不要)。
移行を計画する — RHEL 8 からの2つの選択肢
RHEL 8 の利用者にとって、2029年5月31日はまだ先のように見えて、実際には検証・調整・展開を含めると決して余裕のある期間ではありません。移行先は RHEL 9(2032年5月まで)と RHEL 10(2035年5月まで)の2つです。長く使うシステムであれば、サポート残期間の長い RHEL 10 を直接目指す価値がありますが、ミドルウェアやベンダー製品の対応状況によっては RHEL 9 が現実的な着地点になります。いずれの場合も、leapp ツールによるインプレースアップグレード(8→9→10 と順にメジャーバージョンを進める方式)と、新環境を構築して切り替える方式の2つがあります。アップグレード・ELS 契約・サードパーティ支援の比較は RHEL 意思決定ガイド(英語)にまとめています。
よくある質問
RHEL 8 のサポート期限はいつまでですか?
RHEL 8 のメンテナンスサポートは2029年5月31日に終了します(フルサポートは2024年5月31日にすでに終了済み)。それ以降も、有償の延長ライフサイクルサポート(ELS)を契約すれば2033年5月31日までセキュリティパッチを受け取れます。ただし、この日付が適用されるのは最終マイナーリリースの RHEL 8.10 だけです。8.9 以前のマイナーリリースに固定されたサーバーは、すでに標準ストリームのパッチ提供が終了しています。
RHEL 9 のサポート期限はいつまでですか?
RHEL 9 のフルサポートは2027年5月31日、メンテナンスサポートは2032年5月31日に終了します。有償の ELS を利用すれば2036年5月31日まで延長できます。なお、2026年8月時点で標準ストリームのパッチを受け取れるのは最新マイナーリリースの RHEL 9.8 のみです。9.6 は EUS(延長アップデートサポート)の契約がある場合に限り2027年5月31日までパッチが提供され、9.7 などの奇数マイナーには EUS 自体がありません。
なぜ RHEL 8.10 だけが更新を受け取れるのですか?
Red Hat は各メジャーバージョンの最新マイナーリリースに対してのみ、標準サブスクリプションでのパッチ(エラータ)を提供しています。RHEL 8.10 は RHEL 8 系の最終マイナーリリースであるため、RHEL 8 のメンテナンスサポートが終了する2029年5月31日までパッチを受け取り続けます。一方、8.0〜8.9 は次のマイナーリリースが出た時点で標準ストリームの提供が終了しており、偶数マイナー向けの EUS もすべて期限切れです(RHEL 8 系最後の EUS だった 8.8 は2025年5月31日に終了)。古いマイナーに固定されたサーバーでも、dnf update で 8.10 に更新すれば追加費用なしでパッチ提供が再開されます。
RHEL 10 への移行はいつ検討すべきですか?
RHEL 10 は2025年5月20日にリリースされ、フルサポートは2030年5月31日まで、メンテナンスサポートは2035年5月31日まで続きます。RHEL 8 を運用中であれば、2029年5月31日の期限から逆算して、RHEL 9 または RHEL 10 への移行計画を今から始めるのが安全です。RHEL 9 の利用者には2032年5月まで時間がありますが、メジャーバージョンのアップグレードには検証期間が必要なため、期限の1〜2年前には着手することをおすすめします。移行方法には leapp ツールによるインプレースアップグレードと、新環境を構築して切り替える方法の2つがあります。